授乳中の葛根湯は本当に安全?母乳移行や赤ちゃんへの影響と正しい飲み方
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:葛根湯は国立成育医療研究センターの基準でも「授乳中に安全に使用できる薬」に分類され、適切な用法・用量であれば母乳育児を継続しながら服用可能。
- 要点2:生薬「麻黄(マオウ)」に含まれる微量のエフェドリンによる乳児への影響を最小限に抑えるため、「授乳直後の服用」が最も安全なタイミング。
- 要点3:うっ滞性乳腺炎の初期や引き始めの風邪には有効だが、38.5℃以上の高熱や化膿性乳腺炎、3日以上の症状継続時は自己判断を中止し医療機関の受診が必須。
授乳中の風邪や乳腺炎に葛根湯は飲める?母乳移行と赤ちゃんへの影響を徹底解剖
結論から申し上げますと、授乳中の風邪の初期症状や乳腺炎の初期トラブルにおいて、葛根湯の服用は基本的に安全とされています。国内外の医薬品適正使用ガイドラインや、妊娠・授乳期の薬物療法に関する中核拠点である国立成育医療研究センター「授乳と薬相談室」のデータにおいても、葛根湯は「授乳中でも安全に使用できる薬剤」として位置づけられています。
市販薬や医療用医薬品の添付文書には「授乳中の人は医師または薬剤師に相談すること」といった画一的な注意書きが記載されていることが多く、これが母親たちの不安を煽る一因となっています。しかし、これは製薬会社側の法的なリスク回避の文言であり、「服用してはならない(禁忌)」を意味するものではありません。
母乳への移行に関しては、内服した葛根湯の有効成分が母体の血液中に取り込まれ、そこから母乳中へと分泌される量は母体摂取量のわずか1%未満(乳児換算量として臨床上問題のない微小レベル)に留まります。したがって、通常規定された量を数日間服用する範囲であれば、赤ちゃんに毒性や発育障害などの重大な健康被害が生じる可能性は極めて低いと判断されています。
【データ比較】ツムラ・クラシエ・市販薬の成分差と授乳期の安全性基準
医療機関で処方される医療用漢方製剤(ツムラ葛根湯エキス顆粒、クラシエ葛根湯エキス細粒など)と、ドラッグストアで購入できる一般用医薬品(市販薬)では、配合されている生薬エキス量(満量処方か1/2処方か)や添加物に違いがあります。授乳中に選択する際の目安として、客観的な数値を下表にまとめました。
| 項目 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用) | 日本薬局方葛根湯エキス 5.0g(乾燥エキス)/日。1日2〜3回分包処方。 | 保険適用(3割負担で数百円程度+診察料) | 医師の診断のもと処方され、最も品質・用量が安定している第一選択肢。 |
| クラシエ葛根湯エキス顆粒(市販・医療用) | 市販品は「満量処方(5,400mg)」と「1/2処方」が混在。製品裏面を要確認。 | 市販:12包 約1,200円〜1,800円前後 | 満量処方は効果が高いが母体の胃腸負担も増加。体力が落ちている際は1/2処方も検討可。 |
| 市販総合感冒薬(風邪薬) | 解熱鎮痛成分、抗ヒスタミン薬、ジヒドロコデインリン酸塩などの複合配合。 | 市販:1,000円〜2,500円前後 | 授乳中は原則避けるべき。コデイン類による乳児の呼吸抑制リスクや抗ヒスタミンによる母乳分泌低下の懸念あり。 |
| アセトアミノフェン単剤(カロナール等) | 単一解熱鎮痛成分(1回300〜500mg)。乳児にも処方される安全設計。 | 市販:タイレノール等 約800円〜1,200円 | 高熱や激しい痛みの緩和には葛根湯より確実性が高い。葛根湯との併用も医師指示下で可能。 |
失敗しない服用のベストタイミングと授乳間隔|搾乳は必要なのか?
授乳中に葛根湯を飲む際、乳児への影響を理論上もっとも少なくするための黄金ルールは「授乳を終えた直後に薬を飲むこと」です。
漢方薬は本来、吸収効率を高めるために「食前(食事の30分前)」または「食間(食後2時間程度の空腹時)」に内服するのが原則です。しかし、授乳期においては母体血中濃度の上昇カーブと授乳タイミングを考慮することが推奨されます。
内服薬が体内に吸収され、母体の血中濃度(および母乳中濃度)がピークに達するのは、服用からおよそ1〜2時間後です。そのため、授乳を済ませてからすぐに服用すれば、次の授乳時間(2.5〜3時間後)を迎える頃には母乳中の成分濃度が大幅に低下しています。これにより、赤ちゃんが摂取する成分量を極小化できます。
なお、ネット上で散見される「葛根湯を飲んだ後は母乳を搾乳して捨てなければならない」という説は明確な誤解です。危険性の極めて低い漢方薬であるため、わざわざ搾乳して母乳を破棄する必要はありません。通常通りの授乳サイクルを維持して問題ありません。

乳腺炎の初期トラブルに葛根湯が選ばれる理由とメカニズム
葛根湯は「風邪薬」としての認知度が高いですが、産婦人科や母乳外来ではうっ滞性乳腺炎(乳管が詰まり母乳が滞留して炎症を起こす状態)の初期治療薬として頻繁に第一選択されます。
葛根湯を構成する7種類の生薬(葛根・麻黄・生姜・大棗・桂皮・芍薬・甘草)には、体を温めて末梢血管を拡張させ、発汗を促す作用があります。この強力な血行促進作用が乳腺周囲の鬱血(うっけつ)を改善し、滞っていた乳流をスムーズにする効果を発揮します。また、芍薬と甘草の組み合わせ(芍薬甘草湯の骨格)には筋肉の緊張を緩め、痛みを鎮める抗痙攣・抗炎症作用があります。
ただし、注意すべきは「葛根湯が効くのはあくまで初期段階」という点です。母乳のうっ滞にとどまらず、細菌感染を伴って化膿している場合(化膿性乳腺炎)は、葛根湯の血行促進だけでは治癒せず、抗生物質の投与や切開排膿が必要となります。以下の危険サインが見られた場合は、漢方に頼らず即座に母乳外来や産婦人科を受診してください。
- 乳房の一部だけでなく全体が真っ赤に腫れ上がり、触れるだけで激痛が走る
- 悪寒とともに38.5℃以上の高熱が丸1日以上下がらない
- 母乳に黄色い膿(うみ)や血液が混ざっている
一般に知られていない盲点とネットの誤解|エフェドリンと副作用の真実
葛根湯に関して専門家が唯一注視するのが、構成生薬である「麻黄(マオウ)」に含まれるアルカロイド成分「エフェドリン」の存在です。
エフェドリンは交感神経を刺激する作用を持ち、気管支を広げたり血圧を上昇させたりします。母乳中に移行した微量のエフェドリンに対し、月齢の低い乳児(特に生後1〜2ヶ月未満の新生児や未熟児)が敏感に反応した場合、ごく稀に「いつもより興奮して寝つきが悪くなる」「機嫌が悪くなりぐずる」「心拍数がやや上がる」といった一過性の症状が見られることがあります。
しかし、これは薬が体内から代謝・排泄されれば自然に治まるものであり、後遺症を残すような毒性ではありません。もし赤ちゃんに落ち着きがない様子が見られた場合は、次回の授乳間隔を少し長めに空けるか、一旦服用を休止して様子を見ることで速やかに解決します。
また、母体側の副作用としては、もともと胃腸が弱い人の胃もたれ・食欲不振、高血圧傾向のある人の動悸などが挙げられます。「漢方薬だから副作用が一切ない」と思い込まず、自身の体調変化にも目を配る必要があります。

【実態検証】育児中の母親たちの生の声と医療現場で見えたリアル
SNSや育児コミュニティ、医療相談サイトに寄せられるリアルな体験談を分析すると、葛根湯に対する母親たちの切実な実態が浮かび上がってきます。
「生後3ヶ月の完全母乳育児中、胸にしこりができて熱感を持ったため、助産師の指示でツムラ葛根湯を内服。授乳直後に飲んで温かいシャワーを浴び、しっかり吸わせたところ翌日にはしこりが消通した」という成功事例が多く見受けられる一方で、「風邪の悪化を防ごうと市販の葛根湯を1週間以上ダラダラと飲み続けた結果、母乳の出が悪くなったように感じた」という声も存在します。
漢方医学の観点では、葛根湯は「体力が充実している人(実証)」が「発症から1〜2日の急性期」に飲むことで最大の効果を発揮します。産後の極度の睡眠不足や疲労で体力が消耗しきっている状態(虚証)で長期連用すると、発汗過多によってかえって体力を奪われ、母乳分泌に悪影響を与えるリスクがあるのです。「引き始めの1〜3日間でスパッと飲む」という使い分けの徹底が、現場の助産師からも強く推奨されています。
【プロの結論】授乳期に葛根湯をおすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
葛根湯を今すぐ活用すべきケースと、使用を控えて医師に相談すべき明確なボーダーラインを整理しました。
【葛根湯の服用が適しているケース】
- 風邪の引き始めで、寒気(ゾクゾク感)があり、まだ汗をかいていない状態
- 乳房にしこりや張りがあり、初期の母乳つまりを感じているが、熱は38℃未満である
- 普段から比較的体力があり、胃腸の不快症状を感じにくい
【服用を避ける・または専門医へ即相談すべきケース】
- すでに大量の汗をかいており、喉の激しい渇きや疲弊感が強い風邪の後期
- 38.5℃以上の高熱、乳房の激しい発赤・拍動痛を伴う化膿性乳腺炎の疑い
- 重度の高血圧、心臓疾患、甲状腺機能亢進症などの持病を抱えている
- 生後数週間の新生児期・低出生体重児の授乳中(医師への事前確認を推奨)
【葛根 湯 授乳 中】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ツムラの葛根湯(医療用)とドラッグストアのクラシエ葛根湯(市販薬)に授乳中の安全性で差はありますか?
A1:安全性における本質的な差はありません。どちらも主成分は同一の生薬エキスです。ただし市販薬には生薬エキス量を半分に抑えた「1/2処方」と医療用と同等の「満量処方」が存在します。体力が落ちている産後は、胃腸への優しさを考慮してあえて1/2処方を選ぶ選択肢もありますが、授乳への影響という点ではどちらも問題なく使用可能です。
Q2:葛根湯を飲んだ後、何時間あければ母乳をあげても大丈夫ですか?
A2:厳密に時間をあける必要はありませんが、血中濃度のピークを避けるため「授乳直後に薬を飲み、次の授乳まで2〜3時間空ける」のが理想的です。万が一、内服後1時間程度で赤ちゃんが母乳を欲しがって泣いた場合でも、そのまま授乳して健康被害が出るリスクは極めて低いため心配しすぎる必要はありません。
Q3:葛根湯とカロナール(アセトアミノフェン)は授乳中に併用しても平気ですか?
A3:はい、併用可能です。乳腺炎や風邪で強い頭痛や38℃前後の発熱を伴う場合、産婦人科や内科でも葛根湯とアセトアミノフェン製剤が同時に処方されるケースは日常的です。ただし、市販の「総合感冒薬(パブロンやルル等)」にはすでに様々な成分が含まれているため、葛根湯との併用は過剰摂取となり絶対に避けてください。
Q4:乳腺炎の予防として、毎日葛根湯を飲み続けても良いでしょうか?
A4:予防目的での長期連用はおすすめできません。葛根湯は発汗を促す強い薬であるため、長期間飲み続けると体内の水分や体力を消耗させ、かえって体調を崩す原因になります。乳腺炎の予防には、こまめな授乳姿勢の変更、水分補給、乳房マッサージなどのケアを基本とし、葛根湯は「詰まりや違和感を覚えた時だけの頓服(2〜3日程度)」に留めましょう。
まとめ:授乳中の体調不良を乗り切るための安全な選択肢
授乳中の母親にとって、薬の服用は常に赤ちゃんへの責任と隣り合わせであり、罪悪感や不安を抱きがちです。しかし、葛根湯は正しい知識と用法を守れば、母乳育児を中断することなく自身の辛い症状を緩和できる非常に心強い味方です。
「授乳直後に飲む」「引き始めの2〜3日間に限定する」「悪化時は迷わず医療機関を受診する」という原則を守り、母親自身の体をいたわる選択を最優先にしてください。母親の健康と笑顔こそが、赤ちゃんにとって最も大切な育児環境です。 (出典: 葛根 湯 授乳 中(Yahoo!ニュース))